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一昔前、この国の売り物は「和」であった

 元大蔵省財務官で「ミスター円」とも呼ばれた榊原英資氏が、ついに日銀の速水優総裁に対して辞任を促す発言をしてしまった。たしかにここのところ、日銀の金融政策は右往左往した印象があった。金利目標だけでなく、量的緩和を含めた金融緩和策をとるのかどうかがやや不透明になったこともある。どう考えても円高は日本経済にはプラスよりもマイナス面が大きいのに、円高を容認するような発言をしてしまったのも、まあ、日銀総裁としてはやや頼りない。

 しかしなにも、辞めろとまで言わなくても良いじゃないですか。そうやって元大蔵相の人間と日銀がいがみ合うことで、市場に対する通貨当局のメッセージはさらに曖昧になってしまう。98年の夏まではこれが理由で円が売りに売られた。景気回復のために超低金利政策を続行する日銀と、低金利が円安の最大要因であるにもかかわらず円買い介入を実施した大蔵省……。

 いまなら低金利政策の日銀と、円売り介入の大蔵省だから、通貨政策としては両者の思惑は同じところにある。ただ、金融調節を巡ってもめるとなると、もはや問題はポリシーミックス以前の次元に引き下げられる。「通貨当局はみんな仲が悪いし、意見が一致しないから政策も鈍い。ならば、もめている間に投機的売買を仕掛けてしまえ」。そんなディーラー達の思惑は膨らむに違いない。

 通貨政策の両輪ともいえる大蔵省と日銀の言うことがばらばらで、ついに辞任勧告発言まで出てきた。……これは単なる足の引っ張り合いだ。アメリカで財務省と米連邦準備理事会(FRB)がけんかするのを見たことがあるか?いいえ。ありません。かれらはお互いのやるべきことをそれぞれにこなしながら、他人のことには口を出さずにしっかりと歩調を合わせて金融政策に挑んでいるのです。榊原氏のズバズバものをいう正確についてはともかく、辞めろなんて言う前に、そっと助言をしてあげて欲しかった。

 アメリカの景気がドン底でジャパン・バッシングが盛んになっていた80年代に、日本人は反論としてよく言ったものです。日本が勝ち続ける理由の一つは、日本人が「和」を重んじて全体のために働くからだ、と。考えて見れば、一昔前の日本の売り物は「和」であった。時に行き過ぎな面もあったが、日本には至る所にチームワークがあったと思う。そのスピリットはいったいどこに行ってしまったのでしょう。あるいは日本は不況に振り回されて、どこかで勘違いをして大事なものを失ったのかも。

 うーむ。今回はヘビーな展開になってしまいました。